比較表で ○×△ (マル バツ サンカク)は通じません。

IT技術者であれば、製品、技術、実装アプローチなどを複数の選択肢から選ぶ際に、各選択肢の優劣を示す比較表を作った経験が一度や二度はあると思います。
その際、良い点に○、悪い点に×、どちらでもないもしくは中間に△をつけることもあるかと思います。しかし、○ = "良い"、× = "悪い"、△ = "どちらでもない"もしくは"中間"という意味を持つのは、日本だけと言われており、英語圏ではこの○×△の記号表記は通じません。特に△については高い確率でどういう意味か聞かれます。

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こちらは、英語の書籍にある比較表の例ですが、Legend (凡例) に○は"Neutral" (中立) とあるように、"良い"という意味では用いられていません。"良い"に相当する記号としては、+が用いられています。おそらく英語の"positive"が"肯定的な"という意味があるのと同時に"正(の数)"という意味もあるため、+を使っているものと思います。もしかすると、〇は+(正) と-(負) の間、つまり 0 (ゼロ) に通じる記号として用いられているのかもしれません。

Project Lionheart Decision Matrix

Keeling, Michael. Design It!: From Programmer to Software Architect. Pragmatic Bookshelf, 2017.
邦題: Design It! - プログラマーのためのアーキテクティング入門
Amazon | Design It!: From Programmer to Software Architect (The Pragmatic Programmers) | Keeling, Michael | Software Development

なお、英語圏の人が比較表を作る場合、記号表記よりも言葉や数字を用いるケースが多いようです。

3 Examples of a Decision Matrix - Simplicable

7 Quick and Easy Steps to Creating a Decision Matrix, with Examples • Asana

27 Printable Pros and Cons Lists / Charts / Templates ᐅ TemplateLab

How To Create a Meaningful Pro-Con List | Indeed.com

試しに "decision matrix" や "pros cons table" などをキーワードに画像検索をしてみます。

decision matrix の画像検索結果

pros cons table の画像検索結果

Pros Cons 表では、言葉の前に bullet 的に+/- や✔/×の記号を並べたり、表の上部に示していることもありますが、そもそも Pros (良い点) と Cons (悪い点) が左右に並んでいるので、記号はあくまでも補助的な表記に過ぎません。

これはあくまでも仮説ですが、日本語入力では比較的簡単に色々な種類の記号に変換ができるのに対し、英語入力では ASCII 文字の記号に限られることが、英語圏であまり記号が使われない理由のひとつではないかと思います。

記号表記は、書き手と読み手がその意味を共有している場合は直感的で分かりやすいですが、そうでない場合は読み手を迷わせてしまったり、誤解を与えてしまうことも考えられます。英語圏の読み手に対して誤解のないように比較表を作るのであれば、Positive / Negative / Neutral、Good / Bad / Neutral、Yes / No / Neutral のように、記号ではなく言葉で書く方が確実です。
もし、日本語の表が○×△で作られていて、それをどうしてもそのまま翻訳しなければいけない場合は、必ず凡例をつけましょう。