実務翻訳者に求められる能力
先日、英語の技術ブログを日本語に翻訳し、note で公開しました。
はてなの方のこちらのブログでは、翻訳に限らず英語でアウトプットすることをテーマに考えてきましたが、note の方は逆に日本語でアウトプットする機会でした。
私自身は翻訳を職業としているわけではありませんが、翻訳について調べている中で実務翻訳についての興味深い教材がありました。
Lesson 1 実務翻訳とは
ワン・ポイント・・・・・・実務翻訳者に求められる能力
「英語が好きだから、仕事にしたい」という思いから翻訳を志す人が多いのですが、実務翻訳者に求められるものは、英語力だけではありません。以下の能力をバランスよく備えている必要があります。
(1)英語の能力
すべては、原文を正しく理解することから始まります。最適な訳語を見つけることによって、原文の真意を読み取り、具体的なイメージをつかむことが大事です。自分が理解できていない内容を表現しようとしても、意味不明の訳になるだけです。また、日本語にも色々なレベルの文章があるように、英語の原文が英文法に準じて、正しく書かれているとは限らないということも頭に置いておく必要があります。
(2)日本語の能力
理解した内容を、読み手に正しく伝えるためには、明快で分かりやすい日本語を書く力が必要です。毎日何気なく使っている日本語でも、いざ適切に使おうと思うと、意外と難しいものです。普段から、表現者の目で文章を読むように心掛け、論理的な文章を書く訓練を意識的に行なことが大切です。
(3)翻訳対象に関する知識
言い換えれば、「専門知識」ということですが、最初からパーフェクトである必要はありません。要は、原文を正しく理解できればいいのですから、分からないことが出てきたら、とにかく調べ、調べた知識を蓄積していけば、道が開けてきます。希望分野が決まっていれば、その分野に関する新聞記事や雑誌に普段から目を通しておくことをおすすめします。
(4)調査する力
最近は、インターネットの普及で、様々な情報がぐっと入手しやすくなっています。分からないことは分かるまで調査する「粘り強さ」こそがプロ翻訳者の必須条件です。少しでも疑問が生じたら、調査の手間を省かず、とことん調べましょう。そのためには、パソコンやインターネットに強くなることも必要です。
MRI語学教育センター, Lesson 1 実務翻訳とは
この教材に書かれていたことは、このブログがテーマにしてきた、日本のIT技術者が英語でアウトプットする際にも共通するものがあるように思いましたので、今回は「英語でアウトプットするIT技術者に求められる能力」を考えてみました。
英語でアウトプットするIT技術者に求められる能力
ITプロジェクトの現場では、英語が得意だから、留学経験者だから、帰国子女だから、海外出身だからなどという理由で、日本語文書の英訳や英語版の作成をアサインされることが時折行われますが、伝わる英語のアウトプットを作るのに必要な能力は英語力だけではありません。以下の能力をバランス良く備えている必要があります。
(1) 日本語の能力
既にある日本語の文書を英訳する時は、日本語で書かれた内容を正しく理解できる必要があります。正しく理解できないと、誤訳してしまう可能性があります。
先に日本語の文書を作ってから英語版を作る時も、日本語の文法として正しい文章を書ける必要があります。別の人が英訳する場合には、翻訳者に意図を正しく伝えなければいけませんし、翻訳ツールを使う場合にも文法的に正しい日本語で書かないと意図とは異なる英訳になることがあるためです。
日本の英語教育の敗北🥲 pic.twitter.com/BFbMcNi0rV
— ゆう🇺🇸本気のアメリカ就職 (@honkiku1) 2023年4月17日
(2) 英語の能力
英語のアウトプットを読み手に正しく伝えるためには、分かりやすい英文を書く必要があります。
日本語の文書を英訳する時に、元の日本語が主語を省略しているような場合は、適切に主語を補完して正しい英語にする必要があります。また、元の文章が長すぎる場合は、2文に分けるなどといった工夫も必要です。直訳すると分かりにくい英文になってしまう時に、元の文章の意図を変えずに意訳するためには、高度な英語能力が必要です。
(3) ドメイン知識
ITに限らずとも専門性が要求される分野について文章を書く際には、その分野のドメイン知識が必要です。日本語の原文があってそれを英訳する場合でも、単に日本語が読めるだけでは、内容を理解できるとは限りません。
例えば、IT用語を一般用語と勘違いして誤訳してまうケースはよく見かけます。
また、特定の業界や企業の中だけで通じる言葉を使っている文章を英訳する際にも注意が必要です。
(4) 調査能力
ITの世界では、日々新しい技術、製品、サービスが発表されます。たとえドメイン知識があったとしても、その知識が古いこともあり得ます。足りないドメイン知識を補ったり、アウトプットに必要な情報をアップデートするためには、調査能力が必要になります。
すべての能力をひとりで備える必要はない
4つの能力をひとりの人物が備えている幸運はなかなかないでしょう。ITの現場であれば、チームで取り組むことが多いと思いますので、あなたがマネージャーやリーダーで英語のアウトプットを作らなければいけない場合は、チームとしてこれらの能力が備わっているか確認し、足りない能力がある場合は補強しましょう。あなたがメンバーとして英語のアウトプット作成にアサインされた場合は、自分に足りない能力を明確にし、マネージャーやリーダーと相談して必要なサポートをもらいましょう。