世界は処理したいプロセスにあふれている
This process flow diagram shows the process in which the process running on the server performs the encryption and decryption processes.
上の英文は、下の日本語で書かれた文章を翻訳ツールで英訳したものです。
このプロセスフロー図はサーバー上で実行されるプロセスが暗号化と復号化の処理を実行する過程を表している。
元の文章は多少無理やり組み立てていますが、「プロセス」、「処理」、「過程」が "process" と訳されています。日本語はカタカナと漢字で書き分けられているため、何とか読めますが、英語は同じ単語が4回も登場する読みにくい文になっています。
コンピュータは、現実世界で行われる業務の流れ (ビジネスプロセス) をプロセッサを中心としたハードウェアを使って自動化するところから発展していますので、IT文書には process と訳される言葉が頻繁に登場します。
英語が process になる単語
プロセス①
Linux や Windows などのオペレーティングシステム (OS) 上で実行されているプログラムのことを「プロセス」と言います。Linux であれば ps コマンド、Windows であれば tasklist コマンドやタスクマネージャーで実行中のプロセスを確認できます。
IT文書でも、監視などを扱うインフラストラクチャのレベルの文書や、アプリケーションでも実装レベルに近い文書であれば、よく登場する言葉です。
この意味におけるプロセスは、英語でも "process" です。
プロセス②
「業務プロセス」や「ソフトウェア開発プロセス」など、一連の仕事を進める方法や手順も「プロセス」と言います。日本語における「工程」に相当します。
業務プロセスは、英語では "business process" と言います。辞書によっては、operating process と訳すこともありますが、その場合は、sales operating process (販売の業務プロセス) や branch operating process (支店の業務プロセス) など、何の業務プロセスかを明確にした方が良いです。もちろん business process も文脈を限定する場合は、sales business process や branch business process などと書いた方が良いですが、business process は単体でも比較的よく使われる言葉になります。
ソフトウェア開発プロセスは、英語でも "software development process" ですが、"software development life cycle (SDLC)" という言い方もあります。他の意味も含めてプロセスという言葉が続く文書の場合は、software development life cycle を使って同じ言葉が繰り返し登場することを避けられます。ただし、その場合もどちらか一方を使って文書の中では一貫性を持たせましょう。
処理
しょり①【処理】―する(他サ)<(なにデ)なにヲ―する>
事件または事務などをさばいて、始末をつけること。「―を誤る/データの―に追われる/化学―・終戦―」
―けい⓪【―系】〔コンピューターで〕利用者が入力したプログラムを処理して実行することをつかさどるプログラム。「フォートランの―」
山田忠雄他編, 新明解国語辞典 第八版, 三省堂, 2020.
日本語の名詞としての「処理」も「情報処理」や「処理機能記述」のように、IT業界で昔から使っている言葉です。英語では、"process" または "processing" と訳します。
また、動詞としての「処理する」もIT文書でよく使われます。名詞の場合は、"process" か "processing" のほぼ2択ですが、動詞の場合は、"process" の他にも、"handle"、"deal with"、"take care of" などの選択肢があります。英文において、"処理する" 以外の意味で "process" を使う見込みがある場合は、他の動詞表現を使うことも検討してみてください。
過程
かてい①【過程】
時の流れに従って進行していく物事の順序。また、その途中の経過。プロセスとも。「研究の―にあり、結論が出るのはまだ先だ/△さまざまな(回復の)―をたどる/発砲スチロールは原油精製―に生じた副産物が原料だ」
山田忠雄他編, 新明解国語辞典 第八版, 三省堂, 2020.
日本語の「過程」もプロセスと似た意味で使われることがあります。「(ソフトウェア、システム)開発プロセス」のことを「開発過程」という組織もあります。「過程」もまた "process" と訳せますが、シノニム (同義語)である "procedure" や "step" を使うことで、他の意味で使われる "process" との混在や連続を避けられます。
process が連続する場合は、一部を書き換える
今回は、英語の "process" に訳される日本語として、IT文書でもよく使われる「プロセス」、「処理」、「過程」という言葉について見てきました。日本語で文章を書いていると、それぞれ違う言葉と意味なので、違和感なく使えてしまいますが、英語にすると冒頭の翻訳ツールの例のように異なる意味で使われる "process" が並んでしまうことがあります。
特に第三者に英訳をお願いしたり、翻訳ツールを使ったりして、英文を見直さないと "process" が連続していることに気づかない場合があります。
英訳した文章は必ず確認し、同じ単語が並んでしまっている場合は、シソーラスなどを使って一部の言葉を置き換えることも試してみてください。