英語でも体言止め的な表現が適切なケース

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闇雲に体言止めを避ける必要はない

前回のブログ記事では、日本語の体言止め表現を英語にするのが難しいことをご紹介しました。

youneedaken.hatenablog.com

しかしながら、体言止めを避けることだけを考えるあまり何でも「です・ます」調や「である」調で書いてしまうと、日本語も英語もぎこちない表現になってしまうことがあります。今回は、日本語の体言止め的な表現をそのまま英訳した方が良いケースを紹介します。

体言止めをそのまま英訳した方が良いケース

用語やデータ項目などの定義

英語の辞書における言葉の意味定義は、以下の例のように完全文になっておらず、日本語に訳すと体言止めのような名詞終わりの表現になります。

application programming interface
: a set of rules that allows programmers to develop software for a particular operating system without having to be completely familiar with that operating system
(日本語訳)
プログラマが特定のオペレーティングシステムを熟知していなくても、そのオペレーティングシステム用のソフトウェアを開発可能にするためのルールの一式

Application programming interface Definition & Meaning - Merriam-Webster

また、データ項目の定義なども日本語に訳すと名詞終わりの表現になることが一般的です。

inventory_id: A surrogate primary key used to uniquely identify each item in inventory.
(日本語訳)
inventory_id: 在庫品を一意に識別するのに使用する代理キー。

MySQL :: Sakila Sample Database

実は上記2つの例はどちらもコロンを "is" に置き換えると、"{見出し} is {意味定義}." のように S (主語) + V (動詞) + C (補語) の完全文になります。

用語集やデータ辞書などを、日本語で無理に「です・ます」調や「である」調で書くと、意味定義の部分だけを英訳した時に主語がない英文や無理やり形式主語 (仮主語) の "it" を付加した不自然な英文になる可能性があります。用語集やデータ辞書などの意味定義は、名詞終わりにしておく方が良さそうです。

ものや事柄の列挙

ひとつの単語だけでは表しきれない「もの」や「事柄」を列挙する時も体言止め的な表現をすることがあります。例えば、プレゼンテーション資料で要点や論点を箇条書きする時や、職務経歴書でスキルを列挙する時には、完全文ではない名詞句で書くことがあります。

ただし、スキルを記載する場合などは、名詞(または名詞にかかる形容詞)の組み合わせで一文を作っても構いません。日本語で言うところの「体言止め」のようなものと言うと分かりやすいでしょうか。

英語の「体言止め」
Strong communication and presentation skills.
Knowledge of implementing and troubleshooting.

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もちろん英語の箇条書きは必ず名詞句にするという規則や慣習があるではなく、完全文の箇条書きもあります。ただし、どちらで書くにしてもパラレリズムを意識して、同じ箇条書きの中では、単語のみ、名詞句のみ、完全文のみなどに揃えるようにしましょう。

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メールのサブジェクト

メールのサブジェクト (件名) もメーラーの表示領域の制約に合わせて短く簡潔にするために、体言的な表現になることがあります。例えば、"Request for expense approval" (経費承認のご依頼) のような表現は、英語のメールでも使われます。

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本文では体言止め的な表現は使わない

今回挙げた例の他にも、プレゼンテーション資料のスライドのタイトル、章題や節題、図表の見出しなどで体言的な表現を使うことがあります。しかし、これらはいずれも1つのフレーズで完結する使い方になります。

設計書やマニュアルなどのある程度長さのある文書で、英訳することが想定されているものについては、本文の中では体言的止め的な表現は使わない方が良いでしょう。