(2021-10-25 追記)
和製英語が英会話や英文で通じないことはよく知られていますが、IT業界でも英語圏で通じないカタカナ英語があります。
英語圏では日本語と同じ意味では通じないカタカナ英語をいくつか紹介します。
System Engineer (システムエンジニア)
システムエンジニア (SE)が和製英語だと言うことはよく知られていますが、英語圏におけるsystems engineer ("s"がつきます)は、"システム工学の専門職"のような意味になり、日本におけるプログラマの上位職のような意味はありません。
役割に応じて、business analyst (ビジネスアナリスト)やsoftware developer (ソフトウェア開発者)などと表現した方が通じます。
通じない文
I'm a system engineer.
私はシステム工学の専門家です。通じる文
My role in this project is a business analyst.
このプロジェクトにおける私の役割はビジネスアナリストです。
Host (ホスト)
日本では、金融機関や官公庁などで使われている大型コンピュータのことをホストと呼び、そのような大型コンピュータの技術者のことを"ホスト系"と呼ぶことがありますが、英語でhostと言ってもあまり通じません。mainframe (メインフレーム)の方が一般的に通用します。
通じない文
My specialty is host.
私は人をもてなすのが得意です。通じる文
The application is built on a mainframe.
そのアプリケーションはメインフレーム上で作られています。
Cutover (カットオーバー), Service In (サービスイン)
私は新入社員研修で「プロジェクトの完了は"カットオーバー"ではなく、"サービスイン"と言いましょう」と教えられました。システムを構築する側の視点ではなく、お客様であるシステムを利用する側の視点で語るのが望ましいというのが理由です。ただし、cutoverは"伐採済の土地"や"切り替え"という意味で英語の辞書にもあり、プロジェクト管理の文脈でもこの言葉が使われているケースが僅かながらありますが、service inは英語の辞書にもなく、和製英語と考えられます。
Project Cutover-A vital step in Project Go Live
しかし、私がいくつかグローバルプロジェクトに参画していた中では、あまりcutoverという言葉も見かけませんでした。
代わりに、go live (動いていなかったものが動き出す) やlaunch (新しい製品やサービスの提供を開始する)の方が一般的に用いられます。
通じない文
The system's service in date is January 1st.
システムの日付サービスは1月1日です。通じる文
The system will go live on January 1st.
システムは1月1日に稼働を開始します。
SIer (SIer)
システム開発や運用を請け負う企業としてのSIerも和製英語です。systems integratorであれば、英語圏でも通じます。この場合もsystemsと複数形の"s"がつくことが多いです。
Merit / Demerit (メリット / デメリット)
IT技術者であれば、提案や設計の場面で製品やサービスなどの比較をすることがあると思います。その際、比較対象の良い点・悪い点を日本語でメリット / デメリットと表現する場合がありますが、英語圏ではあまりmerit / demeritとは言いません。
英語圏では、pros / consもしくはadvantage / disadvantageと言うことが多いです。比較表では、pros / consの方がよく目にします。
Playing Manager (プレイングマネージャー)
スタッフとしての現場業務とマネージャーとしての管理監督を行うプレイングマネージャー (野球などで言うところの選手兼監督)もそのままplaying managerと訳してはいけません。"遊んでいるマネージャー"という意味になってしまいます。
もちろん英語圏にも選手兼監督はいますので、正しくはplayer managerと言います。
通じない文
He is a playing manager.
彼は遊んでいるマネージャーです。通じる文
He is a player manager.
彼はプレイングマネージャー(選手兼監督)です。
Image (イメージ)
よくお菓子のパッケージなどに“写真は味をイメージしたものです”と書かれるように、日本語ではイメージという言葉が“頭の中で想像するもの”という意味で使われます。転じて、提案書や設計書などのIT文書でも“画面イメージ”やシステム同士の繋がりを大雑把に示して“システムイメージ”のような但し書きをつけ、“実際に作られるものとは違います”ということを示すことがあります。
しかし、英語のimageは、像、画像、映像などの“目に見えるもの”の意味で使われます。そのため、screen imageと書いても“スクリーンに投射された映像”という意味になったり、system imageも“システムの画像”なような意味になります。
あえて英語にするとすれば、for illustrative purpose onlyのように書きます。
通じない文
This is an image.
これは画像です。通じる文
The diagram is for illustrative purpose only.
この図は例示のみを目的としたものです。
Hearing (ヒアリング)
IT業界に限らず、日本のビジネス現場では、お客様などから要望や意見などを聞き取り調査することを指してヒアリングと言うことがあります。一方、英語のhearingは、聴覚・聴力の他には議会で行われる公聴会や裁判所で行われる公判の意味で用いられます。
日本語のヒアリングに近い英語としては、interviewが使われます。
通じない文
There was a hearing for that matter.
その件について公聴会が開かれた。通じる文
We conducted an interview with our client.
お客様に聞き取り調査を行った。
hearingで想像されているもの
Enquete (アンケート)
日本語でも一般的に使われるアンケートですが、元々フランス語のenqueteから来た言葉です。
英語ではquestionnaireやsurveyと言います。
Excel (エクセル)
リモート会議で画面共有をしている時などに、日本語では"Excelを見てください"と言うところを、英語でそのまま"Please see the Excel"などと言ってしまうことがあります。この言い方も通じないことはありませんが、Excelはあくまでも表計算を行うソフトウェアのことを指します。
Excelで作られた表はspreadsheetと言うため、英語圏では"Please see the spreadsheet"のように言う方が一般的です。
似たような理由で、Wordで作られたファイルはWord document、PowerPointで作られたファイルはPowerPoint deckのように、WordやPowerPointの後ろにdocumentやdeckとつけた方が通じます。
(2021-10-25 追記 special thanks to C.K.)
NG (NG)
日本ではプログラムやシステムをテストした結果の記録として、OK や NG と書くことがあります。NG は、"No Good"の略だと言われますが、英語での"No Good"は"役に立たない"、"使いものにならない"という意味で、OK と対になる言葉としてはあまり使われません。
テスト結果の記録であれば、Pass (合格)、Fail (不合格)と書く方が一般的です。合格・不合格というと学校の試験みたいですが、そもそも test = 試験ですね。