(2022-09-04 追記)
AWS Certified Solutions Architect - Associate に合格しました
先日、AWS Certified Solutions Architect - Associate の認定試験に合格しました。AWS は、3か月前に最も基礎的な認定の AWS Certified Cloud Practitioner から本格的な勉強を始めたのですが、AWS のサービス名は、3文字略語だったり、オシャレなサービス名だったりして、初学者や普段 AWS 以外の分野で活動している人にとっては少しとっつきにくいところがあるようにも感じました。
オシャレなサービス名としては、例えばアーカイブ用のオブジェクトストレージの Amazon S3 Glacier。Glacier が氷河のことだと知っていれば、長年に渡って雪が積もって圧縮された氷の塊になった氷河のイメージから、ファイルを長期に渡って保管しておくストレージを何となく連想できますが、知らないと単なる横文字の名前です。IT業界で仕事をしている時にはあまり使うことのない言葉なので、海外旅行好きでもない限り、知らない人も多いのではないかと思います。
一方、マイクロソフトの Azure の同等サービスは、Azure Archive Storage です。こちらはサービスの名前から機能や使い方が想像しやすいですね。
一部の3文字略語や名前は AWS 以外の製品やサービスにも同じか似たようなものがあったりするので、AWS に特化した文書で、読者もそのことが分かっている場合は別として、他の技術領域の言葉も出てくる文書の場合は注意が必要です。
今回は、そのような AWS のサービス名や略語について考えてみたいと思います。
他の領域で同じか似た名前のある AWS のサービス
Artifact
AWS Artifact: AWS のコンプライアンスレポートにオンデマンドでアクセスできる無料のセルフサービスポータル
Service Organization Control (SOC)、International Organization for Standardization (ISO)、Payment Card Industry Data Security Standard (PCI DSS) など、第三者機関からの AWS に関するコンプライアンスレポートをダウンロードできるサービスです。
AWS Artifact(コンプライアンスレポートへのオンデマンドアクセス)| AWS
以前こちらのブログ記事で、"artifact" は、「作成物」や「中間生成物」の意味で使われる単語であることをご紹介しました。AWS のサービス名であることを知らない人が英訳する場合、「AWS の作成物や中間生成物」という一般名詞として訳してしまうことも考えられます。
EBS
Amazon Elastic Block Store (EBS): どんな規模でも使いやすく高性能なブロックストレージ
AWS の仮想サーバである Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) インスタンスにアタッチして使用するブロックストレージです。
Amazon EBS(EC2 ブロックストレージボリューム)| AWS
Oracle社には、Oracle E-Business Suite という名前の Enterprise Resource Planning (ERP) パッケージがあり、しばしば省略して "EBS" とも呼ばれます。私も以前 Oracle EBS を導入するプロジェクトに参画していたり、担当していた銀行の会計システムとして使われたりしていたため、AWS について知る前は EBS というとERPパッケージが最初に頭に浮かんでいました。Oracle社は、SAP社に次いで世界シェア2位のERPパッケージベンダーなので、ERP や会計の分野で活動している人は、EBS と見たときにERPパッケージを先に思い浮かべるかもしれません。
Direct Connect
AWS Direct Connect: AWS への専用ネットワーク接続を作成する
AWS の専用線サービスです。主にオンプレミスのデータセンターと AWS クラウドの仮想ネットワークを繋ぐために使います。
AWS Direct Connect(AWS への専用ネットワーク接続)| AWS
IBM社には、IBM Sterling Connect:Direct というよく似た名前のマネージドファイル転送のソフトウェア製品があります。海外の金融機関や政府機関でよく使われており、金融機関から政府機関への電子ファイル提出に Connect:Direct の使用が要件として定められているケースもあります。読み手が AWS にあまり詳しくなく、海外の金融機関や政府機関に関係するシステムに携わっている場合は、Connect:Direct の誤字と読み違えてしまうことも考えられます。
BSA E-Filing System - Secure Direct Transfer Mode (STDM)
DX
Direct Connect のことを略して "DX" ということがあります。ただし、今時は AWS を普段から使っている人も "DX" を単体で見たら、"Digital Transformation" のことだと思うのではないでしょうか。
Lambda
AWS Lambda: サーバーやクラスターについて検討することなくコードを実行
Lambda は、AWSの Function as a Service (FaaS) です。仮想サーバやコンテナを構築しなくても、Python、Node.js、Java、C# などで書かれたプログラムを、タイマー起動やデータベースからのトリガーなどによってイベント駆動の関数として実行することができるようになります。
AWS Lambda(イベント発生時にコードを実行)| AWS
Python、JavaScript、C#、Java などでは、ラムダ式という関数を簡易的に表現する構文を使うことができます。日本語では AWS のサービスの方は「Lambda 関数」と言って、プログラミング言語の構文の方は「ラムダ式」と言うことが多いですが、英語だとどちらも "Lambda (lambda) function" です。
SES
Amazon Simple Email Service: 大規模なインバウンドおよびアウトバウンドのクラウドメールサービス
AWS のメール送受信サービスです。アプリケーションに電子メール送信機能を追加したり、受信する電子メールの処理を実装することができます。
Amazon SES(高可用性で低価格なEメール送信サービス)| AWS
日本のIT業界では、ソフトウェアやシステムの開発・保守・運用などの業務について技術者の労働を提供する契約形態のことを「システムエンジニアリングサービス (System Engineering Service)」と言い、"SES" と省略することがあります。ただし、この言葉は英語圏ではあまり使われません。
システムエンジニアリングサービス契約 - Wikipedia
SMS
AWS Server Migration Service: オンプレミスワークロードを AWS に移行する
VMware vSphere、Windows Hyper-V などの仮想マシンを AWS に移行するサービスです。現在は、後継サービスの AWS Application Migration Service (AWS MGN) の利用が推奨されています。
AWS Server Migration Service(AWS へのオンプレミスサーバーの移行)| AWS
リフトアンドシフト - AWS Application Migration Service
一般的には、SMS というと携帯電話やスマートフォンで使うテキストメッセージの short message service のことを思い浮かべるかと思います。
Cloud Practitioner や Solution Architect - Associate の模擬問題などで、モバイルデバイスに通知を送るシナリオで選択肢に SMS が出てくることがあるのが紛らわしいですね。
SNS
Amazon Simple Notification Service: フルマネージド型 pub/sub メッセージング、SMS、電子メール、およびモバイルプッシュ通知
プッシュ型の通知を実現できるメッセージングサービスです。SQS、SMS、Lambda関数、HTTPエンドポイント、電子メール、モバイルアプリケーションエンドポイントなどへの通知メッセージを実装することができます。
Amazon SNS(サーバーレスアプリのための pub/sub メッセージングサービス)| AWS
(2022-09-04 追記 special thanks to M.S.)
SNS も日本では Facebook や Instagram などの social networking service の略として使われることが多いかと思います。なお、英語圏では SNS よりも social media ということが多く、あまり AWSサービスとの混同はないようです。
サービス名には、Amazon や AWS の接頭辞をつける
今回は、AWS のサービス名やその略称の中でも、他の製品や技術と同じか似た名前を持つものを見てきました。AWS 以外の技術領域についても扱う文書の場合は、Amazon や AWS の接頭辞も含めて正式なサービス名を書くのが良いと考えます。それにより、第三者に英訳を任せる場合も誤訳が生じる可能性を減らすことができます。
また、AWS は、今回取り上げたもの以外にもサービス名やその略称を見ただけでは何のサービスか分からないものも多いです。文書全体が AWS について書かれているものであっても、AWS に馴染みのない読み手がいると予想される場合は、最初に正式名称と簡単な説明を書くのが良いと考えます。